ホンダ・トヨタが旧車レストアに挑む理由とは?300億円市場に見る”次の自動車ビジネス”

こんにちは!スミスです。

ホンダやトヨタといった日本を代表する自動車メーカーが、旧車のレストア事業に本格参入するというニュースは、自動車業界に新たな潮流を感じさせます。東洋経済オンラインの報道によれば、「日本車メーカーも新しいビジネスを見つけたようだ。それがレストア事業」(ホンダやトヨタが参入する市場規模300億円「レストア」という新ビジネス | トレンド | 東洋経済オンライン)と述べられており、新車販売が成熟・減速する中で、メーカーが”過去の名車”に再び価値を見出している点は非常に象徴的です。

ホンダは2026年4月から「Honda Heritage Works(ホンダ ヘリテージ ワークス)」をスタート。webCGの報道では、「古いホンダ車を長く大切に乗り続けたいというオーナーへ向けたヘリテージサービス」(ホンダが旧型車向けのレストア&部品供給サービスをスタート まずは「NSX」から提供 【ニュース】 – webCG)として、純正復刻部品の供給とレストアサービスを提供します。

この記事では、なぜ今メーカーが旧車レストアに注目するのか、この市場が持つ戦略的価値、そしてブランド戦略としての意味まで、ビジネス視点で徹底的に解説していきます。


旧車レストア市場の全体像

旧車レストア市場は約300億円規模とされ、自動車産業全体から見れば決して巨大市場ではありません。しかし、この分野の本質は「量」ではなく「質」にあります。旧車オーナーは価格に対する感度が低く、純正部品・メーカー保証・正統性といった要素に強い価値を感じるからです。

国内旧車ブームの拡大

近年、国産旧車ブームが盛り上がりを見せています。東洋経済オンラインの記事では、「1960年代のスポーツカー、例えばトヨタ『2000GT』などは昔から多くの愛好家に支持を受けていたが、最近では1980年代から2000年代後半に生産されたモデルも注目されはじめ、人気の車種が拡大してきた」(東洋経済オンライン)と分析されています。

この傾向により、より多岐にわたるモデルの中古車価格が高騰するとともに、レストアや交換部品の市場も活況を呈しています。かつては一部のマニアだけが楽しむ世界だった旧車が、今や幅広い層に支持される文化として定着しつつあるのです。

欧米と日本の部品供給体制の差

Auto Messe Webの指摘によれば、「旧車の希少性や文化遺産価値を認め、税制優遇はもちろん、メーカーやアフターマーケットを問わず、クラシックパーツ供給や再生サービスに対応している欧米諸国」(他メーカーや輸入車もウェルカム! ネッツトヨタ富山がレストア事業に本腰を入れる意外な理由 | ~カスタム・アウトドア・福祉車両・モータースポーツなどのカーライフ情報が満載~ AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ))に対し、日本は遅れを取っていました。

2017年ごろから国内の自動車メーカーでも純正部品の復刻が始まっていますが、一部の人気車種に限定されており、部品点数も「1台3万点といわれる自動車部品に対して10%にも満たず、欧米と比べるともの足りないのが現状」( AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ))でした。

この状況が変わりつつあるのが、今回のホンダ・トヨタの本格参入です。メーカー自らが旧車の価値を認め、組織的にレストア事業を展開することは、日本の旧車文化にとって大きな転換点と言えるでしょう。

ホンダ・トヨタの具体的な取り組み

ホンダ「Heritage Works」の全貌

ホンダは2026年4月1日から、旧型スポーツタイプ車両を対象としたヘリテージサービスを開始します。このサービスは2つの柱で構成されています。

Honda Heritage Parts(ホンダ ヘリテージ パーツ)

webCGの報道によれば、「販売終了となった部品の中から、修理・メンテナンスに不可欠なものを純正互換部品として供給」し、「当時と同様の材料・製法で再生産する『純正復刻部品』も加え、これらをホンダヘリテージパーツとして、グローバルに供給していく」(webCG)とあります。

取り扱い部品の一覧は公式ウェブサイトに掲載され、順次更新されます。部品オーダーは全国のホンダカーズで受け付ける予定です。グローバル供給という点が重要で、海外の旧車オーナーにとっても朗報となるでしょう。

Honda Restoration Service(ホンダ レストレーション サービス)

初代NSXを対象に、1993年より提供してきた「NSXリフレッシュプラン」を、ホンダヘリテージパーツも活用してオリジナルの性能や質感などを可能な限り復元する新たなレストアサービスとして一新します。

サービスメニューは、「エンジンやサスペンション関連など、要望の多い運動性能に関わる項目をパッケージ化した『基本レストア』と、それに加えて外装と内装の施工、個体のコンディションに応じて、より細やかで総合的な作業を施す『トータルレストア』の2種類を用意」( webCG)しています。

私が特に評価したいのは、初代NSX誕生の地であり、NSXリフレッシュプランを運営してきた栃木県高根沢の施工工場を「Hondaヘリテージワークス高根沢」に改称し、レストア専門拠点として位置づけている点です。これは単なるサービス追加ではなく、組織的にレストア事業を展開する本気度の表れです。

対象車両:初代NSX(NA1-100型)

東洋経済オンラインの取材では、レストア事業が対象とする車両は当面、1990年に発売された初代NSXの初期型(NA1-100型)に限られます。理由は「もっとも数が売れたモデルだから」(東洋経済オンライン)とのことですが、人気車種でもあり、宣伝のためにも妥当な選択だと思います。

また、重要な条件として「レストアの対象は顧客の乗っているクルマで、純正の状態に戻すのが前提です。改造が激しい車両は受け付けられません」(東洋経済オンライン)とあります。これはメーカーとして、オリジナルの状態を尊重し、正統性を担保する姿勢の表れです。

トヨタディーラーのレストア事業

トヨタの場合、メーカー本体よりも先に、各地のディーラーがレストア事業に参入しています。東洋経済オンラインでは、「昨今の旧車ブームの影響か、ここ数年で潮目が変わりつつあり、レストア事業に手を出すディーラーが目立ち始めた。とくに目立つのが旧車マーケットで人気車種が多い日産ではなく、トヨタディーラー」(AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ))と指摘されています。

神奈川トヨタ、ネッツトヨタ富山、茨城トヨペットなど、各地でポツポツと火が付き始めています。これらのディーラーは、創立記念イベントの一環としてレストアプロジェクトを開始したケースが多く、その後も継続的に事業として展開しています。

私が興味深いと感じるのは、ディーラーがレストア事業を始めた背景です。ネッツトヨタ富山の例では、「高年齢者雇用安定法による定年延長の就業を検討していた時期。レストアに需要があるならば、古いクルマへのスキル、技術がある元エンジニアやサービスマンにレストアエンジニアとしてその作業に従事してもらうのはどうか」(AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ))という経営判断がありました。

これは単なるビジネス拡大ではなく、ベテラン技術者の雇用維持と技術継承という社会的意義も持っています。旧車レストアが、人材活用と文化継承の両面で価値を生み出している好例です。

なぜメーカーが旧車レストアに挑むのか

利益率とブランド価値の両立

旧車レストア市場の最大の魅力は、利益率とブランド価値を両立できる点にあります。新車販売は競争が激しく、利益率が低下する傾向にあります。一方、旧車オーナーは価格よりも品質や正統性を重視するため、適正な利益を確保しやすいのです。

メーカー純正のレストアサービスには、他の業者にはない強みがあります。オリジナルの設計図や製造ノウハウを持っている、純正部品を復刻できる、メーカー保証を付けられる。これらの要素は、旧車オーナーが最も求めているものです。

私が評価したいのは、メーカーが「量」ではなく「質」を追求するビジネスモデルに舵を切っている点です。大量生産・大量販売ではなく、少数の顧客に高い価値を提供する。この転換は、自動車業界の成熟を示すと同時に、新たな成長の可能性を示しています。

ブランドDNAの語り直し

レストア事業の本質は、単なる修理ビジネスではありません。メーカー自らが旧車を守り、再生することは、自社のDNAを語り直す行為でもあります。

EV化・自動運転化が進むほど、「エンジン音」「機械としてのクルマ」「所有する喜び」といった情緒的価値は希少になります。旧車レストアは、メーカーの歴史やルーツ、クルマづくりの哲学を伝える重要なメディアなのです。

特にトヨタはGRブランド、ホンダはタイプRやスポーツモデルの歴史を持ち、旧車レストアは現在のスポーツカー戦略とも親和性が高いのです。webCGの報道によれば、東京オートサロン2026でホンダが「美しくレストアされた初代『NSX』も出展」(webCG)したことは、この姿勢の表れです。

長期的マーケティング効果

レストア事業は、新車販売への波及効果も期待できます。旧車に憧れた若年層が現行モデルに興味を持つ、あるいはブランドへのロイヤルティ(忠誠心)を高めるといった長期的マーケティング効果は無視できません。

初代NSXをレストアしてもらった顧客は、ホンダというブランドへの愛着を深めるでしょう。その顧客が次に車を買うとき、ホンダを選ぶ可能性は高まります。また、レストアされた旧車が公道を走ることで、ブランドの歴史や技術力が可視化されます。

私が個人的に注目しているのは、レストア事業が「顧客との生涯関係」を構築する手段になっている点です。新車を売って終わりではなく、その車を長く使ってもらい、必要なら蘇らせる。この姿勢は、サステナビリティ(持続可能性)が重視される現代において、非常に説得力があります。

技術継承という社会的使命

旧車レストアには、技術継承という社会的使命もあります。特にエンジン整備の技術は、EV化が進むと失われる可能性があります。レストア事業を通じて、ベテラン技術者から若手への技術伝承が可能になるのです。

ネッツトヨタ富山の例のように、定年を迎えたベテラン技術者の雇用を維持しつつ、その技術を次世代に伝える。これは企業の社会的責任(CSR)としても評価されるべき取り組みです。


次の自動車ビジネスとしての可能性

「製造業」から「カルチャー産業」へ

私は、旧車レストア事業が自動車メーカーが「製造業」から「カルチャー産業」へ一歩踏み出した象徴だと感じています。クルマを単なる移動手段としてではなく、歴史・物語・体験として再定義する。旧車レストア事業は、その最前線にあるビジネスなのです。

自動車は単なる工業製品ではなく、文化の一部です。特定の車種には、その時代の空気感、デザイン哲学、技術的挑戦が凝縮されています。メーカーがそれらを守り、次世代に伝えることは、文化産業としての責任でもあります。

東京オートサロン2026での注目度の高さは、「クルマ好きがどこに価値を感じているか」を如実に示しています。最新のEVやコンセプトカーも魅力的ですが、過去の名車が持つ物語性や情緒的価値は、決して色あせないのです。

グローバル展開の可能性

ホンダがヘリテージパーツをグローバルに供給すると宣言していることは、重要な意味を持ちます。日本車の旧車は、世界中にファンがいます。特に北米や欧州では、1980〜90年代の日本車が文化的アイコンとして扱われるケースも増えています。

グローバルにレストア事業を展開することで、日本車ブランドの価値を世界規模で高めることができます。これは単なる部品販売ではなく、日本の自動車文化を輸出することでもあるのです。

今後の展開予想

ホンダは当面、初代NSXに絞ってレストアサービスを提供しますが、今後は対象車種が拡大する可能性が高いでしょう。シビック タイプR、S2000、インテグラ タイプRなど、ホンダには多くの名車があります。

トヨタも、ディーラー単位での取り組みから、メーカー主導の組織的なレストア事業に移行する可能性があります。スープラ、セリカ、MR2といったスポーツカーはもちろん、カローラやクラウンといった大衆車のレストアにも需要があるでしょう。

また、日産やマツダなど他のメーカーも、この流れに追随する可能性があります。スカイラインGT-R、フェアレディZ、ロードスターといった名車を持つメーカーにとって、レストア事業は魅力的な選択肢です。

レストア事業が示す自動車業界の未来

旧車レストア事業は、自動車業界の未来を考える上で重要な示唆を与えてくれます。それは、「新しいものを作り続けるだけが成長ではない」ということです。

過去に作ったものを大切にし、長く使い続けられるようサポートする。これは、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環型経済)の考え方と一致します。使い捨てではなく、長期使用を前提としたビジネスモデル。これこそが、成熟した産業が目指すべき姿なのかもしれません。

また、レストア事業は顧客との関係性を長期化させます。新車を買ってもらうだけでなく、その車を何十年も使い続けてもらい、必要なら蘇らせる。この「生涯関係」は、単発的な販売よりも強固な絆を生み出します。

まとめ:レストア事業は戦略的ビジネス

ホンダ・トヨタの旧車レストア事業参入は、単なる懐古趣味ではありません。それは、利益率の確保、ブランド価値の向上、技術継承、長期的マーケティング、文化的責任という、多層的な戦略を持つビジネスです。

300億円という市場規模は、確かに小さいかもしれません。しかし、この分野が持つ質的な価値、ブランドへの貢献、社会的意義を考えれば、決して無視できない重要性を持っています。

新車販売が成熟・減速する中で、自動車メーカーは新たな収益源を模索しています。レストア事業は、その有力な選択肢の一つです。そして何より、この事業は顧客に喜ばれ、社会に貢献し、ブランドを強化する。三方良しのビジネスモデルなのです。

私たちは今、自動車産業の大きな転換点にいます。EV化、自動運転化という技術的革新と並んで、旧車レストアという「過去との対話」が始まっています。この二つの流れは、一見矛盾するようでいて、実は補完的な関係にあります。

未来に進むためには、過去を大切にする。その両立こそが、成熟した産業の姿なのかもしれません。ホンダ・トヨタの旧車レストア事業は、その可能性を示す重要な一歩だと、私は考えています。


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参考記事リンク

  1. 東洋経済オンライン:ホンダやトヨタが参入する市場規模300億円「レストア」という新ビジネス
  2. webCG:ホンダが旧型車向けのレストア&部品供給サービスをスタート まずは「NSX」から提供
  3. Auto Messe Web:他メーカーや輸入車もウェルカム! ネッツトヨタ富山がレストア事業に本腰を入れる意外な理由

※本記事の情報は2026年1月20日時点のものです。最新情報については公式サイト等でご確認ください。

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