こんにちは!スミスです。
2025年12月14日、世界中で愛されるロボット掃除機「ルンバ」を生み出した米iRobot(アイロボット)が、米連邦破産法第11条(Chapter 11)の適用を申請しました。「えっ、ルンバが倒産?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。しかし、この破産申請は事業をやめるための清算ではなく、事業を継続しながら再建を目指すための法的手続きです。本記事では、なぜiRobotが破産申請に至ったのか、今後ルンバはどうなるのか、そしてユーザーへの影響はあるのかを、わかりやすく解説していきます。
iRobotの破産申請とは何か|Chapter 11の基礎知識
破産=会社消滅ではない|再建型の手続き
2025年12月14日、iRobotは「米デラウェア州の連邦破産裁判所に連邦破産法第11条の適用を申請した」(「ルンバ」のiRobot、破産手続きを開始 中国PICEAが買収へ – ITmedia NEWS)と発表しました。この報道を受けて、SNSでは「ルンバ倒産」というワードがトレンド入りし、多くの人が驚きの声を上げました。
しかし、米連邦破産法第11条(Chapter 11)とは、日本の民事再生法に相当する法的手続きです。これは会社をたたむための清算型の破産(Chapter 7)とは異なり、事業を継続しながら債務を整理し、経営を立て直すための再建型の手続きなのです。
iRobotのゲイリー・コーエンCEOは「本日の発表は、iRobotの長期的な将来を確保する上で極めて重要な節目となります」(ルンバのアイロボット破産申請、中国PICEAが買収へ – 家電 Watch)とコメントしており、事業継続の意思を明確に示しています。
Picea(ピセア)グループによる買収計画
今回の破産申請は、「プレパッケージ型」と呼ばれる特殊な形式で行われています。これは、破産申請前に主要な債権者と再建計画について合意しておき、裁判所の承認を得ながらスムーズに再建を進める手法です。
iRobotは「主要な製造委託先であるShenzhen PICEA RoboticsおよびSantrum Hong Kongとの間で、再建支援契約を締結した」(「ルンバ」のiRobot、破産手続きを開始 中国PICEAが買収へ – ITmedia NEWS)と発表しました。Picea(ピセア)は中国深圳に本拠を置くロボット掃除機メーカーで、中国とベトナムに研究開発・製造拠点を持ち、これまでに2000万台以上のロボット掃除機を製造・販売している企業です。
Piceaは今回の買収により、iRobotの株式持分の100%を取得し、iRobotは完全子会社として非公開企業になる予定です。手続きは2026年2月までに完了する見込みとされています。
既存ユーザーへの影響は?
多くのルンバユーザーが気になるのは「手元のルンバは使えなくなるのか」「サポートはどうなるのか」という点でしょう。
この点について、iRobotは「製品の出荷やカスタマーサポート、アプリの提供などは通常通り継続する」と説明しています。
「ルンバ」のiRobot、破産手続きを開始 中国PICEAが買収へ – ITmedia NEWS
また、iRobot日本法人の山田毅社長は『日本の顧客への直接的な影響はない。製品保証や修理などアフターサービスもこれまで通り提供する』
ルンバの米アイロボット、破産法申請 中国企業傘下に – 日本経済新聞
とコメントしており、少なくとも短期的には従来通りの使用とサポートが受けられる見通しです。
破産申請に至った3つの理由|Amazon買収失敗から中国企業との競争まで
理由1:Amazon買収計画の失敗が致命傷に
iRobotの苦境を決定づけたのは、2022年に発表されたAmazonによる約17億ドル(約2500億円)の買収計画が頓挫したことです。
2022年にはAmazonがiRobotを買収する契約が締結されましたが、買収によりロボット掃除機市場における競争を制限してしまう可能性が懸念され、規制当局からの承認を得られなかったことで買収は中止となりました。
ついにルンバのiRobotが破産申請、中国の主要サプライヤーに経営権移譲の再編支援契約を締結へ – GIGAZINE
EUの欧州委員会は、Amazonの市場支配力がさらに強まることへの懸念を示し、承認を拒否。2024年1月、ついに買収は白紙撤回されました。この結果、iRobotは当時の取締役会長兼CEOが辞任したほか、従業員の31%を解雇、研究開発費を約30%削減するなど、業務再構築計画を実施せざるを得ない状況に追い込まれました。
買収の審査を待つ約1年半の間、iRobotは大胆な戦略転換を控えていたとされます。この「空白の時間」が、競合他社に追い越される結果を招いてしまったのです。
理由2:中国メーカーの台頭と価格競争
近年のロボット掃除機市場では、中国メーカーの急速な台頭が目立っています。Roborock(ロボロック)、Ecovacs(エコバックス)、Dreame(ドリーミー)といった中国企業は、高度なナビゲーション機能やAI搭載モデルを、ルンバよりも大幅に安い価格で提供するようになりました。
かつてロボット掃除機市場を独占していたiRobotですが、2025年の世界出荷ランキングでトップ5から脱落するほどシェアを失いました。技術的な革新が停滞し、価格競争でも不利な立場に立たされていたのです。
理由3:米国の関税政策によるコスト増
さらに追い打ちをかけたのが、米国による輸入関税の強化です。iRobotはベトナムなどで製造した製品を米国に輸出していましたが、米国向けのベトナム製ロボット掃除機には最大46%もの関税がかけられ、2025年だけで約2300万ドル分のコスト増になったと報道されています。
この関税負担は、すでに利益率が圧迫されていたiRobotにとって致命的でした。製造拠点の移転やサプライチェーンの見直しには莫大なコストと時間がかかるため、短期での解決が困難だったのです。
これら3つの要因が複合的に作用し、iRobotは今後12ヶ月以内に継続企業として存続できるか疑義があると自ら警告せざるを得ないほどの財務危機に陥りました。「収益が第4四半期の前年比で約50%、通年では前年比で24%ほど減少」(ついにルンバのiRobotが破産申請、中国の主要サプライヤーに経営権移譲の再編支援契約を締結へ – GIGAZINE)という深刻な業績悪化が、今回の破産申請へとつながったのです。
Picea買収で何が変わるのか|ルンバユーザーへの影響と今後の展望
Piceaとはどんな企業か
今回iRobotを買収するPicea(正式名称:Shenzhen PICEA Robotics Co.)は、実は長年iRobotの製造を支えてきたパートナー企業です。Piceaは、ルンバの複数モデルで製造・組立・部品供給を担当してきた、いわば「ルンバを一番よく知っている外部企業」なのです。
Piceaは世界中で1300件以上の知的財産権を持つ技術力のある企業で、自社でもロボット掃除機を製造・販売しています。また、iRobotの業績悪化により「製造代金の未払い」や「融資・債権」を大量に抱えることになり、結果として「最大級の債権者」(ルンバの米アイロボット、破産法申請 中国企業傘下に – 日本経済新聞)の地位を得ました。
Chapter 11の手続きでは、最も多くの債権を持つ者が大きな発言力を持ちます。Piceaは債権者としての立場を活かして、今回の買収を実現させたと言えるでしょう。
株主と顧客、それぞれへの影響
株主への影響は深刻です。「本計画が裁判所に承認された場合、iRobotの既存の普通株式はすべて無効となり、株主には分配が行なわれない見通し」()とされており、株主は事実上、投資した資金を失うことになります。iRobotはナスダック市場から上場廃止となり、非公開企業として再出発します。
一方、顧客への影響は限定的とされています。製品の出荷やカスタマーサポート、アプリの提供などは通常通り継続するため、すでにルンバを使用しているユーザーは、引き続き同じようにルンバを使い続けることができます。
ただし、中長期的には製品ラインナップの変更、価格帯の見直し、サポート体制の変化などが起こる可能性があります。特に中国資本の下でどのような製品戦略が取られるのか、日本市場での展開はどうなるのかは、今後注目すべきポイントです。
今後のルンバはどうなる?
Piceaの傘下に入ることで、iRobotにはいくつかのメリットも期待できます。まず、製造コストの削減です。Piceaは中国とベトナムに製造拠点を持っているため、生産効率の向上やコスト競争力の強化が見込めます。
また、Piceaが持つ技術的な知見も活用できる可能性があります。中国メーカーは近年、LiDAR(レーザー測距センサー)を使った高度なナビゲーション技術やAI機能で先行しています。これらの技術とiRobotのブランド力が組み合わされば、新たな競争力を生み出せるかもしれません。
一方で懸念もあります。中国資本の企業がルンバのデータをどのように扱うのか、プライバシー保護は大丈夫なのかといった点は、今後慎重に見守る必要があるでしょう。
まとめ|iRobotの苦境から学ぶこと
iRobotの破産申請は、かつて市場を独占していた企業でも、環境変化への適応に失敗すれば苦境に陥ることを示す象徴的な出来事です。Amazon買収の失敗、中国メーカーとの競争激化、米国の関税政策という3つの逆風が重なり、30年以上の歴史を持つ企業が法的整理を余儀なくされました。
私個人の考えとしては、iRobotの事例は単なる企業の失敗ではなく、グローバル市場における技術革新と価格競争の激しさを物語るものだと感じます。特に中国メーカーの台頭は目覚ましく、コスト競争力と技術開発のスピードで欧米企業を圧倒しつつあります。
ルンバは日本でも「ロボット掃除機」の代名詞として根強いファンを持つブランドです。今後Piceaの下でiRobotがどのような製品戦略を展開し、ブランドをどう再構築していくのか、非常に興味深いところです。技術の継承とユーザーへの安心感をどう提供するかが、再建の鍵になるでしょう。
ルンバユーザーとしては、当面は今まで通り安心して使用できそうですが、今後の動向には注意を払い、次の選択肢も視野に入れておくことが賢明かもしれません。iRobotの今後の展開を、引き続き注目していきたいと思います。
参考記事リンク
- 日本経済新聞 – ルンバの米アイロボット、破産法申請 中国企業傘下に
- ITmedia NEWS – 「ルンバ」のiRobot、破産手続きを開始 中国PICEAが買収へ
- 家電 Watch – ルンバのアイロボット破産申請、中国PICEAが買収へ
- GIGAZINE – ついにルンバのiRobotが破産申請
- FabScene – ルンバのiRobotが米連邦破産法11条を申請
※本記事の情報は2025年12月15日時点のものです。最新情報については公式サイト等でご確認ください。

