こんにちは!スミスです。
2025年11月、東京ヤクルトスワローズが新外国人投手として発表したヘスス・リランソ。ドミニカ共和国出身の右腕は身長188cm・体重112kgという恵まれた体格を持ち、長くマイナーリーグでリリーフとして活躍してきた経歴の持ち主です。しかし「メジャーリーグ(MLB)での登板経験がない」という事実は、獲得発表と同時にヤクルトファンの間で賛否両論を呼びました。
外国人投手の評価において最も難しいのは、数字だけでは日本での成功が保証されない点にあります。3A(マイナー最上位ランク)での実績がそのままNPB(日本プロ野球)に通用するとは限らず、逆に「伸びしろがある」と捉えることもできます。本記事では、Baseball Savantの詳細データをもとにリランソの投球特性を丁寧に読み解き、2026年シーズンにヤクルトのブルペンで軸となる存在になれるかどうか、現実的な期待値を整理していきます。
リランソとはどんな投手か―基本プロフィールと経歴―
プロフィールと歩んできたキャリア
ヘスス・リランソは1995年3月7日生まれの31歳。身長188cm・体重112kgの大柄な右腕で、ドミニカ共和国出身です。東京ヤクルトスワローズ公式サイトによれば、「背番号62、右投げ右打ち、経歴:コレヒオ・ヌエバ・エスペランサ高-ブレーブス-オリオールズ-ドジャース-3Aサウンズ-ヤクルト」(ヘスス リランソ | 選手・チーム | 東京ヤクルトスワローズ) とのことです。
このトランザクション(移籍履歴)を一覧すると、リランソがいかに多くの球団を渡り歩いてきたかがわかります。ブレーブス、オリオールズ、ドジャース、パイレーツ、ダイヤモンドバックス、タイガース、ナショナルズ、ヤンキース、ブルワーズ、そして2025年オフに自由契約となりヤクルト入りを果たしました。これほど多くの球団に在籍してきた背景には、各球団でMLBの40人枠(メジャー昇格候補リスト)に入り切れなかったという現実があります。
私個人の考えとしては、この経歴を「不安要素」と一面的に捉えるのは早計だと思っています。多球団を渡り歩く投手の中には「力はあるが、チーム事情でメジャーに上がれなかった」タイプも少なくありません。とくに近年のMLB組織は、豊富な資金力を背景にマイナーの選手層が厚くなっており、30歳前後の外国人投手がメジャーへの道を切り開くことは以前に比べて格段に難しくなっています。重要なのは、彼が各球団から「使い続けられてきた」という事実であり、それが2025年の3Aナッシュビル・サウンズ(ミルウォーキー・ブルワーズ傘下)での起用数に表れています。
ヤクルトが抱えるブルペン事情とリランソ獲得の意図
2026年のヤクルトは池山隆寛監督体制の1年目を迎えます。その中で外国人リリーフ枠の補強は課題の一つでした。前年まで在籍していたペドロ・アビラ投手が退団したことで、外国人リリーフの穴を埋める新戦力が必要となり、リランソの獲得に至ったと考えられます。
私が注目するのは、ヤクルトがあえてMLB経験のない3A投手を選んだ点です。これは「コストパフォーマンスの最大化」を重視した補強と見ることができます。MLB経験者を獲得しようとすると年俸交渉の規模が大きくなりますが、リランソのような3A投手であれば比較的コンパクトな契約でリリーフの頭数を確保できます。実際、日刊スポーツの報道によれば推定年俸9300万円での1年契約とのことです。NPBで活躍実績を積んだ外国人リリーフと比較すれば明らかに低コストであり、「当たれば大きい」低リスク型の補強といえるでしょう。
データで読む2025年の成績―強みと課題が見えてくる―
2025年シーズンの全体成績と後半の急上昇
Baseball Savantのデータによれば、リランソの2025年(3Aナッシュビル・サウンズ)の成績は「48試合登板・0先発・6セーブ・58.1イニング・防御率 3.39・64奪三振・WHIP 1.22・3勝4敗」(Jesús Liranzo Stats: Statcast, Visuals & Advanced Metrics | baseballsavant.com) というものでした。3Aリリーフとしては十分に平均以上の数字です。
しかし私が特に注目するのは、この数字の中に隠れている「前半・後半の大きな格差」です。月別の詳細データを見ると、前半(〜7月)は防御率 4.67だったのに対し、後半(8月以降)はERA 2.30と約半分以下の数値を記録しています。特に8月は16.1イニングを投げて防御率 1.65、WHIPはわずか0.67という驚異的な安定感でした。これは単なる「調子の波」ではなく、何らかの修正・成長があった可能性を示唆しています。
6月には防御率 8.59という大炎上の月もあり、変動の幅が大きい点は否定できません。ただ、その後の急激な立て直しを「適応能力の高さ」と読むこともできます。NPBでも序盤に苦しんだ後にしっかり修正できる投手であれば、シーズンを通じた貢献度は十分に期待できます。開幕直後の成績だけで判断を急がないことが重要でしょう。
左右打者への対応と投球の方向性
スプリット(左右打者別成績)のデータを見ると、対左打者が25.1イニング・29奪三振・WHIP 1.26、対右打者が33.0イニング・35奪三振・WHIP 1.18となっており、大きな偏りは見られません。左右ともに一定の奪三振能力を持ち、右打者に対して若干安定感があるというバランスの良さは、NPBのブルペンで起用される場面を選ばない利点になります。特定の手の打者にのみ対応できるワンポイントリリーフ(一打者限定の登板)ではなく、複数打者を相手にしながらアウトを積み重ねるセットアッパー(8回前後を担う中継ぎ)として使いやすい特性といえるでしょう。
私個人の考えとしては、リランソの最大の武器は「数字に表れやすい三振奪取能力」だと見ています。48試合・58.1イニングで64奪三振というペースは9イニングあたり約9.9個(K/9)に相当し、これはNPBで活躍するリリーフとして十分に戦えるレベルです。問題は、この奪三振能力がNPBの打者相手にそのまま発揮できるかどうかです。日本の打者はMLBの打者に比べてコンタクト(バットにボールを当てること)への意識が高く、安易なボール球に手を出してくれない傾向があります。ゾーン(ストライクゾーン)内での勝負が求められる場面が増えることを、リランソ自身がどれだけ早く理解し適応できるかが最初の関門です。
マイナー通算成績から見える「キャリア全体の評価」
マイナー通算成績は317試合・18先発・25セーブ・455.2イニング・防御率 4.31・533奪三振・WHIP 1.34です。防御率 4.31という数字だけを見ると「やや平凡」と感じるかもしれませんが、この数値はキャリア全体を通算したものであり、2022〜2023年の成績が大きく数字を引き下げています。2022年のAAAでの防御率 8.36、2023年のAA在籍時の防御率 7.09などが通算成績を押し下げている主因です。
一方で、2024〜2025年の2シーズンはAA・AAAを通じて防御率が安定してきており、投手としての「後半期の成熟」が見て取れます。2024年のAA(ソマセット・パトリオッツ)では23試合で防御率2.67、2025年のAAAでは48試合で防御率3.39という数字を出しています。MLB未経験ではあるものの、3Aという最上位クラスのマイナーで2年連続して安定した成績を残したことは、実力の裏付けとして評価に値します。
NPBへの適応を左右する3つの要素
①制球力とカウント管理―NPBで最初に問われる関門―
NPBの打者が持つ最大の特徴は「カウントを深めてからの選球眼の高さ」です。日本の打者は、不利なカウントでも粘り続けてファウルで球数を稼ぐことが習慣的にできる選手が多く、1イニングに平均投球数が増えやすい環境です。リランソの2025年の四球数は58.1イニングで23個(BB/9=約3.5)です。この数字は「特別多い」わけではありませんが、「特別少ない」とも言えません。
私が注目するのは、カウントを有利に進める「ファーストストライク取得能力」がNPBでの安定感を大きく左右するという点です。ボールが先行してカウントが1-0、2-0となると、日本の打者は際どいコースを見極めてさらにボールを待ちにいくことが多く、3-1などの好打者カウント(打者有利のカウント)を作られてしまいます。逆にファーストストライクを効果的に取れれば、その後の投球の幅が広がります。リランソが序盤の登板でどのようにストライク先行の投球を確立できるか、キャンプから開幕直後の動向を注目して見ていきたいと思います。
②球種構成と縦の変化球の有効性
リランソの投球スタイルについては、速球を主体に縦の変化球を組み合わせた三振奪取型と考えられます(※球種構成の詳細はNPB公式データが発表され次第ご確認ください)。体格(188cm・112kg)から生み出される力強い球威は、NPBのリリーフとしても十分に武器になり得ます。
私個人の考えとしては、縦の変化球の質こそがNPBでの成否を分ける最大の要素になるとみています。NPBの右打者に対して右投手が速球だけで圧倒するのは難しく、低めへの縦の変化球(スプリット、フォークなど)でいかに空振りを誘えるかが鍵です。日本の打者は外角の変化球を打ちにいかず見極める力が高い傾向があるため、ストライクゾーンから外れる「落ちる球」への対応が得意ではない打者も多く存在します。仮にリランソが縦の変化球をゾーン内から落とすコントロールを持っていれば、NPBへの適応はスムーズに進む可能性があります。
③連投耐性とコンディション管理
リリーフ投手の価値はシーズンを通じた稼働率にあります。2025年は48試合に登板しており、1シーズンで高い頻度で登板できる体力的なベースは持っていると判断できます。ただし、3Aの登板ペースとNPBの登板ペースは異なる部分もあります。NPBのペナントレース(公式リーグ戦)は143試合の長丁場であり、特に夏場の高温多湿の環境、東京ドームや神宮球場の状況への適応が求められます。
NPBの外国人選手で「最初の夏に体が持たなかった」というケースは決して珍しくありません。特に体の大きな投手は、日本特有の湿度と連戦の疲労が重なると調子を落としやすい傾向があります。リランソが夏場の暑さにどのように対応するか、球団スタッフとのコミュニケーションを含めたコンディション管理が重要な課題になるでしょう。
2026年ヤクルトにおけるリランソの期待値と現実的な役割
開幕時に想定される起用シナリオ
2026年のヤクルトブルペンにおけるリランソの起用シナリオとして、現実的に想定されるのは「セットアッパー候補の一角」です。石山・星などの実績ある日本人リリーフを軸としつつ、リランソがその前後のイニングを任されるというポジショニングになると考えられます。
私個人の考えとしては、開幕時点では「クローザー(抑え)」としての即戦力を期待するより、まずセットアッパー(勝ちパターンの7〜8回)として信頼を積み上げていく流れが現実的だと思っています。NPBに来た外国人投手が最初から抑えを任されるケースは少なく、多くは序盤の登板を通じて首脳陣と選手の間に信頼関係ができてから、より重要な場面を任されるようになります。リランソの実績を踏まえると「1ヶ月程度の適応期間」を前提に評価することが妥当でしょう。
シーズンを通じた成功の基準と失敗のリスク
リランソが「成功」と評価されるには、何を目安にすればよいでしょうか。私が考える現実的な成功の基準は、シーズンを通じて40〜50試合に登板し、防御率3点台前半をキープすること、そして重要な場面(7〜8回)での起用に応えることです。これはMLB経験ゼロの外国人リリーフとしては十分な成果といえます。
一方、失敗のリスクとして最も大きいのは「制球の乱れによる炎上パターン」です。2025年6月の月間防御率 8.59が示すように、リランソはコントロールが乱れた状態での起用が続くと連続失点を許しやすい傾向が見えます。NPBでは特に「四球を出した後の打者への集中力」が求められます。1つの四球から試合の流れが変わることが多いNPBの試合展開において、ボール先行の苦しい投球が続く場面にどう対処するかが「合否を分けるポイント」になるでしょう。
開幕前に持つべき「現実的な期待値」のまとめ
最後に、ファンの視点から整理すると、リランソへの期待値は「先発5人分の計算ができないが、ブルペンの底上げには確実に貢献できる外国人リリーフ」という位置づけが正確です。過度な期待は禁物ですが、2025年後半の安定感・左右を問わないバランス感・48登板という稼働実績を踏まえれば、NPBで年間40試合以上を安定して投げるポテンシャルは十分に持っています。
私が注目するのは、「奪三振数だけでなく、WHIP(1イニングあたりの出塁許可率)と四球率の変化」です。リランソが日本の打者のスタイルに適応し、ゾーン内での勝負を増やすにつれて、これらの指標が改善されていくはずです。シーズン序盤の3〜4月の成績が長期的な評価のベースになりますが、仮に苦しんでいたとしても、後半に立て直せる「学習能力の高さ」は2025年のデータが証明しています。開幕後の最初の10〜15試合の結果だけでなく、5月以降の適応度合いをじっくり見守る姿勢がリランソ評価の正しいアプローチといえるでしょう。
※本記事の情報は2026年2月28日時点のものです。2026年シーズンの成績・起用状況については東京ヤクルトスワローズ公式サイト等でご確認ください。
